国際取引紛争処理地








ある国際取引についての法的問題を検討するためには、その国際取引についての紛争処理地を想定する事が必要である。

現実的に、国際取引紛争処理地として使用される頻度の高い場所を想定地として検討を行い、
そのほかに個々の場合の特別な条件から紛争処理地となる可能性のある場所があれば、それらも想定地として
追加検討することが賢明である。















訴訟による紛争処理地を想定する場合
紛争処理地の要件

@紛争処理地の司法機関が当該紛争につき国際的裁判管轄を有しなければならない。


A相手方の財産が所在するか所在する可能性の高い地であることが必要である。
 相手方の財産に対して強制執行ができる地。


B国際取引法の内容と司法機関が整備されていて結果の予測性が高い地であることが必要である。
 迅速で公平な裁判を行われるためには、司法制度が整備されており、国際取引の実態に
 明るい裁判官が紛争処理に当たってくれることが必要。


C国際取引の共通語である英語によって紛争処理手続が行える地であることが望ましい。
 紛争処理手続きにおいては、自国の公用語の使用が義務付ているのが通例の為。




以上のような条件を満たして、現実に、国際取引一般に幌区使用されている訴訟外紛争処理制度についての
紛争処理地として考えられる地は、現状においては、英国ロンドンと米国ニューヨークという事になる。















日本の国際取引法

以上の検討により、
SCG GROUP社が通常の場合に、紛争処理地として想定しておくべき場所は、
米国ニューヨーク市と英国ロンドン市であることになる。

そのほかに、SCG GROUP社は、日本国を想定地の一つとしておく必要がある。
それは、日本の当事者としては、日本において訴訟を提起したり、応訴したりするなど紛争処理に関与する機会が
少なくないと予想されるからである。















日本の国際取引法の基本構造(法源)









日本の国際取引法を知るためには、まず、それがどのような基本構造となっているのか?
どのような形式のものがどのような序列で存在しているのか?その基本構造(法源)を理解するのが有益である。
基本構造(法源)は、次の通りである。


@日本国憲法
  日本の国際取引法は、日本国憲法法を頂点とする日本の法制の一部であるから、
  日本の国際取引法の基本構造の頂点に立つのは日本国憲法である。(日本国憲法第98条1項)



A日本国が締結した条約及び確立した国際法規(国際法)
  条約の締結には、国会の承認が必要であり、日本国が締結した条約及び確立した国際法規の厳守を規程しているので、
  日本の国際取引法の一部を構成するが、国際法規と憲法との優先順位については、憲法学において
  議論のあるところであるが、憲法が優先すると解するのが通説である。



B日本の関連法令
  日本国憲法第76条3項は、裁判官に、日本国憲法とともに日本の法令の適用を義務づけており、
  日本の法令のうち国際取引に関連するものは、日本の国際取引法の一部を構成する。

  日本国憲法第98条により、憲法が法令に優先するとともに、日本国が締結した条約及び
  確立した国際法規も法令に優先すると解される。



C日本の国際私法により準拠法として指定された外国法
  日本の法令の一部である法令は、国際取引の法律関係について、場合により外国法を準拠法として、
  その外国法が日本の公序良俗に反しない限りにおいて(法令第33条)適用を命じているので、
  法令により指定された外国法は、日本の国際取引法の一部を構成する。そして、日本の法律と同格と解される。



D慣習法
  公序良俗に反しない慣習であって、法令に規程なき事項に関するものを慣習法として認め、
  次のような効力を与えている。

  (ア)商事に関するものについては、法律として民法に優先する効力(商法第1条)

  (イ)商事に関しないものについてでも、法律と同一の効力(法令第2条)


現状において、このような慣習法と認められたものはないが、荷為替信用状についての
「統一信用状規則」については、これを国際慣習法と認める見解もある。



E条理
  以上の日本の国際取引法の構成する部分に規程されていない事項も、裁判官は、法令の欠缺(けんけつ)を理由に
 裁判を拒否することは許されないため、条理(場合により社会通念、公序良俗などと称される)によって
 裁判を行うから条理も場合により日本の国際取引法の一部を構成する。 (国際取引法要説より抜粋)













































































次に国際取引の主体に関する法律問題について説明しよう。



























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